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料理長の仕事を、なめていませんか?

■ 「なりたい」と「できる」はまったくの別物

調理師の3割は「料理長になりたい」と考えていると言われています。
自分の裁量で献立を組める。部下に指示を出す立場になれる。給料も上がる――。
確かに、料理長というポジションには魅力しかないように見えます。
しかし現場で数多くの料理長を見てきて感じるのは、
「料理長になりたい」と「料理長が務まる」を混同している人があまりにも多いということです。
実際に料理長として転職した方から聞く不満、ワースト3はこちらです。
・オーナーや支配人からのパワハラ
・器や厨房機器を買ってくれない
・部下が使えない
一見、環境や周囲のせいに見えるこの3つ。
ですが一つひとつ紐解いていくと、見えてくるのは「料理長という仕事の本質を理解できていない」という共通点です。

■ 第1位「パワハラ」の正体は、数字のすり合わせ

「オーナーからパワハラを受けている」――こう語る料理長は少なくありません。
しかし、その中身をよく聞くと、実態は数字管理をめぐるすり合わせであることがほとんどです。
・目標売上に対して、現状はどうなのか
・足りない分をどう埋めるのか
・喫食率を上げるにはどうするか
・原価率を下げるにはどうするか
これらはすべて、店を経営していく上で避けて通れない議論です。
言ってしまえば、経営をするために必要な数字のすり合わせでしかありません。
ところが数字が苦手な調理師ほど、この議論を理解できず、返す言葉も持てない。
その結果、「パワハラだ」という言葉で片付けてしまうケースが非常に多いのです。

■ 第2位「器や厨房機器を買ってくれない」の裏にあるコスト意識

「器が古くて、せっかくの料理が映えない」
「厨房を最新にしてくれないと業務効率が上がらない」
これもよく聞く不満です。
しかし、当然ながらこれらの購入には多大なコストがかかります。
旅館やホテルの経営は厨房だけで成り立っているわけではありません。
人件費、広告費、光熱費――あらゆるところにお金がかかっているのです。
まず求められるのは、今ある設備・今ある器で最善を尽くし、結果(売上)を出すこと。
特にたちが悪いのは、自営で店を経営していたものの業績が振るわず店をたたみ、「雇われ」の立場になったにもかかわらず、雇われた途端に経費を度外視した主張を始めてしまう人です。
経営者側の視点を一度でも持ったはずなのに、それを忘れてしまっている――これでは信頼は得られません。

■ 第3位「部下が使えない」は、育成できていないだけ

「2番手がまったくダメ」「新人が使い物にならない」
これもよく聞く不満ですが、はっきり言えば、
「自分は教えるのが下手だ」と自ら告白しているのと同じです。
料理長の仕事はおいしい料理を作ることだけではありません。仕事の半分は、部下の育成と管理です。
「教える時間がない」というなら、時間がなくても部下が自然と育つ仕組みを作ること、そしてこまめにフォローすることこそが料理長の仕事です。
「見て覚えろ」というスタンスの厨房は、30年前にもう終わっています。

■ 料理長とは「管理職」である

ここまでの3つに共通しているのは、料理長というポジションを「管理職」として捉えられていない、ということです。
一般職と違い、料理長は経営に近い立場で仕事をしています。
だからこそ、料理そのものだけでなく、数字・育成・管理といったストレスを背負うのは当然のことなのです。
そのストレスから逃げて、「料理を作ることだけに没頭したい」というのは、料理長という仕事そのものを放棄しており、一般職と何も変わりません。