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割烹の料理長が旅館の料理長になったら必ず失敗する⁉
個人で割烹料理店を営んできたオーナー料理長が、店を閉めて旅館の料理長に転職したい──
そんな希望をもっている方はたくさんいます。

味の評判もよく、スタッフも何人も雇ってきた。
腕にもマネジメントにも自信があり、経営のこともわかっている。

当然、どこへ行っても料理長としてやっていける。そう考えている方がほとんどです。

しかし実際には、
割烹料理店の料理長が旅館の料理長に転職した場合、9割が早期退職となっています。

「料理を作ってスタッフをまとめる。料理長の仕事はどこでも同じだ」

と思われがちですが、
割烹と旅館の厨房には、決定的な違いがあります。

順を追って説明します。

①「場所」がまったく違う

割烹料理店の多くは都心部にあり、なかでも駅近の立地が少なくありません。

一方、旅館の多くは、山あいの温泉地や地方にあります。

人口の多い都心部では調理師を採用しやすいのに対し、
地方の温泉地では採用が難しく、なかなか人が集まりません。

この「場所」の違いが、
厨房のあり方そのものを大きく変えてしまうのです。

②「厨房の人数」がまったく違う

個人経営の割烹であれば、厨房はオーナー料理長がメインで、
あとはパートだけで、

体制はほぼ固定されています。

ところが旅館は規模が大きく、
小規模でも調理師が最低3名、中規模になると10名近くが必要です。

仮に適正人数が5名の厨房でも、調理師がすぐに辞めてしまったり、
急きょ入れた派遣スタッフがまったく戦力にならなかったりして、

3名で5名分の仕事をこなす場面が、日常的にあります。

③繁忙期と閑散期の「振れ幅」がまったく違う

都心の割烹料理店は、繁忙期と閑散期の差がそれほど大きくありません。

一方、旅館は季節や連休によって稼働が大きく変動するため、
人員の調整がさらに難しくなります。

調理師不足が深刻化している昨今は、

「厨房の人数は足りないのに、
稼働率100%の仕事をこなさなければならない」

という過酷な現場も、珍しくありません。

④求められる「力」がまったく違う

割烹料理店は、自分が作りたい料理に存分に時間をかけられる場所です。

それに対して旅館では、調理師が足りない状況でも、
おいしい料理を大量に、決められた時間どおりに出し続けなければなりません。

そのためには、料理の技術に加えて、

・限られた人数で回し切る 「段取り力」
・急な欠員や予約変更に対応する 「臨機応変力」
・部下を効率よく動かしながら育てる 「マネジメント力」

が求められます。

つまり旅館の料理長には、
料理以外に必要な力がたくさんあるのです。

では、どうしたらよいのか

割烹料理店で培った料理の腕は、旅館でも間違いなく武器になります。

問題は、
「料理長の仕事はどこでも同じ」
という思い込みのまま飛び込んでしまうことです。

旅館の料理長を目指すなら、まずは応募先の

・厨房の人数
・繁閑の差
・欠員が出たときの体制

を事前にしっかり確認しましょう。

可能であれば、いきなり料理長ではなく、
二番手や副料理長として旅館の厨房を経験してから、料理長を目指すのも一つの方法です。